2018年度総会・研究発表会のお知らせ


 日本ドイツ語情報処理学会の2018年度総会・研究発表会が下記の通り開催されます。総会・研究会は学会員が直接顔を合わせて情報交換ができる年に一度の機会です。ぜひご出席下さい。

交通:
 地下鉄丸ノ内線にて「茗荷谷」下車,徒歩5分
 *詳細は、こちらにてご確認下さい。

プログラム

 13:30-14:50
 [発表]
  発表者:細谷行輝(大阪大学名誉教授)
  タイトル:ドイツ語教育に活かすAI自動翻訳支援システムの可能性
概要:
 ドイツ語授業を提供する高等教育機関が少なくなっている昨今、インターネットを活用して、その不足内容を補う可能性もあるのではなかろうか。初級ドイツ語はまだしも中級ドイツ語の需要は極めて低いのが実態であろう。
 そうした中、インターネット上の自動翻訳支援システムを介して、初級クラス・中級クラスのドイツ語表現をより深く学習者に理解してもらう可能性について少しく述べたい。
 まずはインターネット上の自動翻訳支援システムとして無料で使える「グーグル翻訳」を利用し、その翻訳結果(まだまだ「使える」までの翻訳結果には至っていないが)から問題点を探りたいと思う。

【ドイツ語1】
Fall Skripal
USA verhängen Sanktionen gegen Russland
Stand: 08.08.2018 21:57 Uhr

Wegen des Giftanschlags auf den Ex-Doppelagenten Skripal und dessen Tochter verhängen die USA neue Sanktionen gegen Russland. Laut US-Außenministerium sollen sie in rund zwei Wochen in Kraft treten.

【グーグル自動翻訳1】
元二人のエージェントSkripalと彼の娘に対する毒攻撃のために、米国はロシアに対して新たな制裁を科す。 米国国務省によると、彼らは約2週間で発効するはずです。

<問題点>:Doppelagentが「二重スパイ」なのか「二人のエージェント」なのかは別として、人称代名詞sieの翻訳「彼らは」は、この人称代名詞が何を受けているかを厳密にチェックしていない、という意味において誤訳と言えよう。これは人称代名詞に限らず「換称(かんしょう)代名詞」の場合にはさらなる厳密化が必要となろう。

【ドイツ語2】
Die USA haben Sanktionen gegen Russland angekündigt. Als Grund führen sie die Verwendung eines Nervenkampfstoffs zur versuchten Tötung von Sergej Skripal und dessen Tochter in Großbritannien an.

【グーグル自動翻訳2】
米国はロシアに対する制裁を発表した。 その理由は、彼らが英国でセルゲイ・スカリプールとその娘の殺害を試みるために神経剤を使用したことを挙げているからです。

<問題点>:ここでのsieは訳出されていないと思われるが、そのために却って「挙げているからです」が浮いてしまって、不自然な表現となっている。ここはあくまでも「その理由として、米国は、。。。を挙げている」としたほうが違和感がない。

【ドイツ語3】
Die Strafmaßnahmen werden laut der Mitteilung des Ministeriums am oder um den 22. August gültig. Zunächst werde der US-Kongress über die Maßnahmen informiert. Die Sanktionen seien gegen staatliche oder staatlich finanzierte Firmen gerichtet. Sollte Russland nicht innerhalb von 90 Tagen nach Inkrafttreten der Strafmaßnahmen beweisen können, dass es keine chemischen Waffen mehr einsetzt, könnten weitere Sanktionen erlassen werden.

【グーグル自動翻訳3】
同省の発表によると、懲罰的措置は8月22日前後に有効となる。 まず、米国議会にその措置について知らされる。 制裁は、州または州が資金を提供する企業を対象としている。 ロシアが化学兵器を使用しなくなったという懲罰措置が発効してから90日以内にロシアが証明できなければ、さらなる制裁が課される可能性がある。

<問題点>:上記ドイツ語1、ドイツ語2、ドイツ語3は、連続した記事であるが、ドイツ語3では、突然、冒頭にDie Strafmaßnahmenという単語が新出する。未知の単語には、不定冠詞(複数の場合は無冠詞)を、既知の単語には定冠詞を付するのが、文法の教えであるが、Strafmaßnahmenという単語は未知の単語、新出であるにもかかわらず定冠詞が付されている。ある程度ドイツ語に通じた者ならば、Sanktionenとの連関から選出された単語と解するであろうが、初心者には純粋な疑問となりえるであろう。筆者は長年、関口存男(つぎお)の「冠詞」論、また、その中核をなす「意味形態論」を研究してきたが、関口の用語に従うならば、Die Strafmaßnahmenは「換称(かんしょう)代名詞」という意味形態にはまるものである。欧米人は往々にして日本人以上に同一単語の繰り返しを嫌うが、例えば「Hund」 ならば、これを繰り返すのではなく、「der vierbeinige Kamerad des Menschen」 といった受け方が可能である。つまり一種の代名詞、「換称代名詞」なのである。どの単語にどういう「換称代名詞」が使えるかは、ある程度決まっているので、知識として知っておく必要があるが、例えば

Der Aal ist ein ausgesprochener Dunkelfisch. Die älteren Tiere wühlen sich tagsüber in den Schlamm ein, so daß nur Kopf und Schwanz herausragen, (KOSMOS, 1952)

というテキストで、Die älteren Tiereが Aal の換称代名詞であること(換称代名詞は、前の名詞を受けている代名詞的機能であるため、必ず定冠詞が付される)は、意識化する必要があろう。もっとも、テキストの理解・受容ではなく、自らがテキストを作る場合に、Aal -> Die älteren Tiere とするためには、よほどのドイツ語力が必要と思われる。

 今回の発表では、自動翻訳支援システムが代名詞及び「換称代名詞」を正しく理解するためには、どのような情報を予め備えている必要があるか、そして、それがドイツ語学習者の代名詞理解にどのように寄与しえるかを示したいと思う。また、時間が許せば、まだまだ実用的見地に至っていない、自動翻訳のドイツ語文の構文解析を、AI的機能(深層学習)を駆使して、システムが自ら学び、自動的に構文解析の質を高めていく仕組みなどについても触れてみたい。これができれば、学習者の構文理解にも大きく貢献し得ると思われる。

 15:00-16:30
 [2018年度総会]
  ・今後の方針について(学会誌の電子化等)
  ・会計報告,予算案審議
  ・役員選挙